それにしても綾香の強さには舌を巻くばかりだ、この春季と秋季、年に二回開催されるこの流派の全国大会 (といっても極○空手や、○道会館などのメジャー流派と比べればその規模は及ぶべくもないのであるが)の中学生までを対象にした 少年少女の部において中学二年の始めの時からこの中学三年の秋の大会まで二年連続、計四回の優勝を果たしているのだ。  しかもその決勝の相手というのも四回連続で俺、坂下好雄が相手であるということは 四回連続で俺は決勝で綾香の後塵を拝している形になり、見方を変えるとここ二年間の間、少年部の男達が束になっても 誰一人として綾香の牙城を崩せなかったということになる。  少年部の男達の名誉の為という訳じゃないが、それぞれ小学生の半ばから入門している者が殆どで、真面目に 道場に通い続けているものは中学生に進学する頃になるとその学校の不良グループなども一目置く存在になるのだ。 手前味噌になるが、俺は綾香が初優勝をした大会の前まで小学校五年の春の大会から三年連続で優勝しており 大人たちからは神童となどと呼ばれ将来を嘱望され、坂下好雄の名前は他流派の間の中でも轟いていたものだ。  だから俺を始めとする男達が不甲斐無いわけでなく、確かにニューヨーク在住中の九歳の時から既に 空手を始めていたとはいえ、中学一年の夏休みが終わったと同時に入門し、その一月後に開催された秋季大会で いきなり準優勝にまで登りつめ、それからさらに半年に満たない異例の短期間で、翌年の春季大会で 少年の部の覇者となった来栖川綾香という、戦の女神アテナの寵愛を一身に受けているとしか思えないほどの 稀有の天才であるからこそ可能な業なのである。 だが、さしもの天才も入門して間の無かった秋の大会に初参戦したときには、判定負けで俺の後塵を拝す形になったのだが、その理由は 綾香が空手というものに始めて触れた地がアメリカであった事と無縁ではなかった。 綾香がこの空手道場に入門したての頃は、確かにパワーやスピードそして技の華麗さの面などは 同年代の女の子はもとより、なままかな男子では到底太刀打ちできないレベルに到達していたが、いかんせん、大味というか アメリカナイズされた (本人曰くベスト・キッズ2やチャーリー・エンゼル、ワイヤーワークアクションにかなりインスパイアされたらしい) 空手の癖が抜けきらないでおり、踵落としや胴回し蹴りに二段蹴り、裏拳etc…等の言わば 見せ技に近い大技に固執する癖があり、上中下段に打ち分ける理詰めのコンビネーションなど殆どなく、これは キックボクシングにおいてローキック禁止ルールの浸透しているアメリカならではの弊害といえるが、綾香が ニューヨーク在住中に入門していた空手道場の指導でもやはり上半身より上での技の攻防に重きを置いていたので 日本空手の特徴とも言える下段への蹴りの防御と耐性が不十分で、他の道場生にそこをつかれ、蓄積された下半身のダメージから 俺との決勝戦では己の力を十分に発揮できずに敗れてしまった。  それでも、初めての大会でそれも在米時代の経験と驚異的な生来のポテンシャルだけで並み居る強者を打ち倒し 決勝まで進出することなど並の人間では到底成しえないことであるし、あの決勝戦だって 綾香のそれまでのダメージがなければ勝負はどう転んでいたものやら・・・。  しかしそれから半年にも満たない練習期間で初優勝を飾り、今回の四回目の決勝戦では あれだけ苦渋を飲まされた下段の回し蹴りもいまや自分のフェバイリット技の一つに加え、フィニッシュは 有名ブラジル人空手家を彷彿とさせる縦蹴りを初公開ときた。 (稽古では全く見せた事も無いくせに、、、あ、でもこいつ 先週TVで見たブラジリアンキックが凄いとかなんとか言ってたっけ、、、ひょっとして見よう見まねで? はぁ〜〜〜一体どこまで強くなるんだこの天才は・・・) [美しき女豹の罠・萌芽編・5ページ]
動画 アダルト動画 ライブチャット