こう、思案に暮れていると綾香が俺の耳元で囁いた。 (ほ〜ら、好雄・・・何時まで自分の世界に浸ってんの・・・、審判の人達ったらカンカンよ、、、)  慌てて主審をみると、憤懣やるかたない表情で手招きで中央に招き入れている。 そこで俺は急いで立ち上がると、未だダメージが抜け切れていなかったのか “ ふらっ ” とよろけそうになったが綾香が間一髪のところで支えてくれたお陰で事なきを得た。   「ぅおっとっとっと、、、綾香サンキュ、、、ははっ俺ってかっこ悪いな、、、負けた相手に 助けられるなんて・・・」 俺がそう自虐的に笑うと、 「なにいってんのよ、さっきもいったでしょ、ここまで強くなれたのも好雄のお陰って」 綾香は笑いながらそう俺をたしなめると、俺に肩を貸しゆっくりと歩み始めた。 本来男であるならば、それが十代の血気盛んなころの男であればなおさら、格闘技において 同年代の女の子に負けるなど、とうてい自尊心の許すところではなく、それが 一度ならず二度、三度繰り返されたら、自暴自棄になるかその格闘技自体止めてしまうだろう。 だが、俺を本より他の男の道場生たちの殆ども、この空手道場を去ることも無く、いやさらにこれまで以上に熱心に 稽古を行うようになっていき、今となっては各自の技量が綾香が入門する以前に比べて長足の進歩を遂げていたのであった。 これはもう、綾香の強さだけでない生来の育ちの良さから来る表裏の無い性格と、その他人(ひと)を 惹きつけてやまない、選ばれし者のみが持ちうるカリスマ性に依るものでしか考えられない。 そこでもう一度横目で間近にある綾香の横顔をそっと盗み見る・・・ 濁りなどどこにも見出せないどこまでも遠くを見据えているその澄み切った眼差しと、端整で 整った顔立ちながら、気まぐれな猫のような目が愛嬌を感じさせ、それが 不思議と冷たさを感じさせない要因なのだろう。 それにこれだけ体が密着していると、綾香の匂いが鼻腔をくすぐる、その匂いは とても半日がかりのトーナメントを戦い終えた者の匂いではなく、皮脂の匂いも芳しいどこか陶酔を誘う様な香りだった。 そこでもう一度綾香の顔を仰ぎ見ると偶然、綾香と俺の目と目が合った、 「や〜ね、何さっきから私の顔ばっかり見て、、、ひょっとして強くて美しいこの綾香様に惚れちゃった?」  にま〜っと、会心の悪戯を思いついた子供のように目尻を下げ、ご満悦ってな感じで 俺の目を覗き込む、 「ば、馬鹿っ!!くだらねえこと言ってねえで、さっさと仕切り線のとこまで連れてけよ!」  俺は、ぶっきら棒にそう言い放ち、真っ赤になっている顔を悟られまいと、踏み板に視線を落とした。 俺は (こいつにはほんっっっとうに、敵わねえや、、、) ともう一度思いつつも、 (綾香となら一緒に歩んでいける・・・) 綾香と共に空手の道を歩んでいける歓びを一人かみ締めるのだった。 [美しき女豹の罠・萌芽編・6ページへ] [戴き物展示場へ]
動画 アダルト動画 ライブチャット