都内にあるごく普通のアパート。 そのごく普通の一室で、ごく普通に見える男二人が今 とんでもない計画を立てていた。 それは、日本最大の宝石店『ジュラダ』の最高額の宝石 『ジュラダ・ダイヤ』を盗み出そうというもの。 だが、その計画はあまりにも無謀と言わざるをえなかった。 なぜなら、裏の世界で名を馳せた数々の名泥棒達が このダイヤを狙いジュラダに侵入したが、誰一人として 生きて返ってくる者がいなかったからだ。 彼らは例外無く、侵入した次の日の朝に惨殺死体となって 都内の各地の宝石店の前に転がることとなった。 「この世で盗れない物は無い、と言われていた  あのカドタまでもがついにやられた・・・  聞くところによると、腹の部分がひしゃげてたそうだ。  くそっ、ジュラダには化け物でも棲んでるのかよ?」 「・・・かもな。  なんせあそこは日本一の宝石店だからな。  きっととんでもない奴が警備してるだろうよ」 「兄貴、やっぱり今回の仕事はやめた方がいいんじゃないか?」 「バカ言うな! 世界各国の有名な泥棒がいなくなった今  デっカい仕事をすりゃ、おもいきり名があがるだろうが!  新二、お前は一生しがないコソ泥のままでいいのかよ?」 「いや、そりゃあ、いつかは世界的な名泥棒に  なりたいけどさ・・・」 「だったら迷うこたぁねえだろう!?」 「でもよぉ・・・」 今、この狭い部屋で口論している二人は 名前を関野 信也、関野 新二 といい、 双子の兄弟である。 彼らは中学卒業と同時に上京し 自動車整備会社に入社したのだが、 上司と先輩のイビりに長続きせず、3ヶ月で退社した後に 都内の民家を主に狙う泥棒へと転身した。 そんな彼らも現在は26才。 ようやく、泥棒としての知識と経験も一人前になってきた。 半年前には大手銀行の金庫からも現金を盗み出す事に成功し、 己の実力に自信がついたので そろそろ大きな仕事をやってみたくなったのである。 そこで、兄の信也が目をつけたのが、国内だけでなく 世界にも高い知名度を誇る『ジュラダ・ダイヤ』 これを無事盗み出す事ができれば、自他共に認める 名泥棒になれると考えたのだ。 「あー・・・、そうかよ、わかった。  ならジュラダには俺一人で忍び込むから。  その代わり、お前とはもう兄弟の縁を切るからな」 「えっ!?  ちょ、ちょっと待ってくれよ兄貴!!  兄貴が俺の前からいなくなったら、この先俺は  どうやって生きていきゃいいんだよ!? 「さあ? そんなの俺の知ったことじゃねえよ。  ずーーーっと、一人でコソ泥続けてたらどうだ?」 「そんなの無理だよ! 俺一人じゃとてもやってけねえよ!」 「じゃあ今夜、お前も一緒にジュラダに行くか?」 「う・・・それは・・・」 「別に無理にとは言わん。短い付き合いだったな新二」 「…わわ、わかったよ! 俺も今夜兄貴についてくよ!!」 「フン、それでこそ俺の弟だ」 「うう・・・」 「まあそう落ち込むなって。  要は、警備員に見つからなけりゃいい事だろ?」 「それはそうだけど、あのカドタだって駄目だったんだし、  そう簡単には・・・」 「大丈夫だ。いいから黙ってついてこい」 今は草木も眠る丑三つ時。 都内の夜は昼間とはうって変わって寂しいもので、 ジュラダの前の道路の人通りもまばらであった。 ましてや、今この双子泥棒がいる店の裏側の道などは 人っこ一人通らない。 「さーて、それじゃさっそく上がらせてもらうとするかな」 「って、兄貴、いったいどこから入るつもりだよ」 「ちょっとした工具を使って、客用トイレの換気扇の戸から入る」 「ああ、なるほど…! 普通の奴なら換気扇の戸の隙間を  通るのはまず無理だけど、細身の俺達ならいけるかもな」 そう、この二人はどちらも身長155cm、体重45kgぐらいの 非常に小柄で細身な体型をしている。 だからこそ、今まで常人には不可能な侵入経路を通って リスクの少ない仕事をする事ができたのだ。 「じゃあ、ちゃっちゃと換気扇の外枠と柵、プロペラを外すぞ」 ガシャッ…、カチャッ…、カコン… 非常に慣れた手つきで、あっという間に 換気扇の部品一式を外してしまった信也。 「さすがは兄貴。整備会社でも一ヶ月程で  ほとんどのバラし方、組立方をモノにしちまったもんなぁ」 「昔話はいいからさっさと中に入るぞ」 狭い隙間を難なく通り抜け、ついにジュラダ侵入に 成功した二人。 トイレのドアを開ければ、もうそこには 『ジュラダ・ダイヤ』が眠る宝石展示場がある。 ・・・カ・・・チ・・・ャ・・・ 音を最小限に抑えてドアを開け、展示場の中を 覗き見る新二。 「うわ…兄貴、展示場の中も真っ暗だ…どうする…?  これじゃ…どこにどんなトラップがあるかわからないよ…」 「おそらく…赤外線センサー、赤外線カメラが  あちこちに設置されてるだろうな…」 「兄貴、いったいどうするんだよ…」 「大丈夫だ。暗視ゴーグルを持ってきてある」 「…え?  暗視ゴーグルってえと、確か暗いところでも  はっきりと周りが見えるっていう、あの・・・」 「そう。こないだ闇ルートで手にいれたばかりのものだ。  これを装着すれば  展示場の様子を見る事ができるぞ」 「へぇー、それはスゴいや…  さっそく調べてみてくれよ兄貴」 信也は暗視ゴーグルをつけると 広い展示場内をくまなく見渡していく。 「・・・どうやら、警備員は巡回してないようだな。  これならなんとか・・・」 「でもよ兄貴、ジュラダ・ダイヤは監視カメラの  真ん前にあるんだぞ。  いったいどうやって盗む気なんだ?」 事前に営業時間に何度も偵察しに来ているだけあって、 監視カメラの位置は把握している双子泥棒。 「・・・力づくだ」 「・・・え・・・?」 「警備員は監視カメラに映った俺達を発見次第、  ものの数秒でここに駆けつけてくるだろう」  だから、その前に保管ケースのロックを外して  ジュラダ・ダイヤを持ち帰る」 「ま、ま、ま、まってくれよ兄貴、  そんなムチャな方法じゃ絶対ムリだよ…!」 「ムチャは承知だ。だが、こんな状況じゃ  こういう手をとるしかない」 「で、でもよぉ・・・」 「大丈夫だ。俺の鍵外しのうまさは知ってるだろ?  俺を信じるんだ」 「うう・・・でも・・・」 「嫌なら帰れ。その代わりお前とは絶縁だ」 「う、わ、わかったよ…兄貴の腕を信じるよ・・・  …手伝える事があったら何でも言ってくれ」 「よし、じゃあ俺はこの小型発煙筒を使って  赤外線センサーを探知しつつ進んでいくから、お前は  俺の両肩を掴みながら後をついてこい」 「え…? どうせ見つかるんだから、なりふり構わず  保管ケースまで走った方がいいんじゃ・・・?」   「いや、今回はコンマ1秒の時間が勝敗を分けるから、  監視カメラの視界をくぐって限界まで保管ケースに近づき  ロックタイプを見極めてから  一気に外しにかかろうと思うんだ」 「あ…なるほど…さすが兄貴」 「じゃあ、いくぞ。途中で何か変な物音とかしたら  すぐに言えよ」 「わかった…」 二人は意を決し、赤外線センサーと監視カメラの視界を 慎重にかいくぐりながら ジュラダ・ダイヤが眠る保管ケースへと近づいていった。 そして、その保管ケースを映している監視カメラの視界外 ギリギリにまで無事到着することができた。 「ふー…  よし、こっからが本番だ。  …鍵は・・・最新のダイアルタイプか・・・    ・・・・・・・・・・・・・・・よし」 「それじゃ新二、今から監視カメラの視界に入って  ロック外しにとりかかるぞ。  ジュラダ・ダイヤをとったらすぐに  さっきの換気扇口から脱出するからな」 「…た、頼んだぜ兄貴」 「おう、任せとけ」 そう言って信也は保管ケースに駆け寄り、ロック解除を始めた。 今、警備室のモニターには信也の姿が くっきりと映っているはずである。 カリ・・・カリ・・・カリ・・・カリ・・・ ダイアルを回した後の音のごくわずかな違いを感じとるために ロック部分に耳を当てながら作業を続ける信也。 カリ・・・カリ・・・カリ・・・カリ・・・カリ・・・ カリ・・・カリ・・・カリ・・・カリ…・・・ (!? ここか・・・!!) 微量の音の違いを聞き逃さなかった信也は、次に 今までとは逆方向にダイアルを回し始めた。 カリ・・・カリ・・・カリ・・・カリ・・・ カリ・・・カリ・・・カリ・・・カリ・・・カリ・・・ (・・・くそ、想像以上に手ごわいぞ・・・!!!) 信也がロック解除を始めてからすでに二十秒が経過している。 そろそろ警備員達がここに駆けつけてきてもおかしくはない。 この状況に、普段いつも冷静な信也も さすがにあせらずにはいられなかった。 そんな彼を見て 「あ、兄貴・・・そろそろヤバイよ。  もう今回はあきらめよう?」 そう、新二が撤退するよう促す。 だが、今まで鍵外しに失敗した事が無かった信也は 半ばムキになってしまっていた。 そんな彼にはもはや何を言っても無反応で、ただただ ダイアルを回し続けているのみである。 そして・・・ カリ・・・カリ・・・カリ・・・カリ・・・カリ・・・ カリ・・・カリ・・・カリィ・・・ ガチャン! 「…やった!」 さらに20秒程経ったところで、ついに 保管ケースのロック解除に成功した。 「やったじゃん兄貴!」 さっそくケースの蓋を開け、ジュラダ・ダイヤを 取り出す信也。 「よし、さっさとずらかるぞ!!」 「おう!」 お互い合図を取り合って二人がトイレのドアに向かおうとした時、 ふいに展示場が明るくなった。 「…とうとう警備員が来たようだな。  だがもう遅い。ジュラダ・ダイヤはいただいていく!」 「兄貴、前、前!!」 「え?」 「うわぁっ!!!!!」 二人が向かっているトイレの前には、すでに警備員が こちらを睨みながら立ちふさがっていたのだ。 男女、二人の警備員だった。 「お前ら、そこを動くな!!!」 男の方の警備員が二人に拳銃を向けながら怒鳴る。 (・・・ちくしょう、  俺達が鍵開けに夢中になっている間に  退路を絶たれていたのかッ!!!)
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